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持っている力から始める支援、ストレングス視点(Strengths Perspective)

ある人を紹介する書類に「無職、うつ病、借金、家族と絶縁」といった言葉だけが書かれていたら、読む人はその人を問題の塊として思い浮かべがちです。しかし同じ人が毎朝近所のお年寄りの犬を散歩させ、古いラジオを直すことができ、また働きたいという夢を抱いているとしたら、話は変わってきます。支援の出発点を欠けているものではなく、その人がすでに持っている力に置こうという考え、それが「ストレングス視点(Strengths Perspective)」です。

ストレングス視点とは、簡単に言えば「人や家族、地域社会が持つ才能や資源、希望を支援の中心に置くソーシャルワーク実践の視点」を意味します。問題から目を背けようというのではなく、問題だけで人を規定しないようにしようという提案です。

本記事では、ストレングス視点が登場した背景と核心となる原則から、現場で使われる方法、そしてこの視点をめぐる批判と限界までを順に見ていきます。


欠けているものではなく可能性から始める支援

ストレングス視点はどのように登場したのか?

1980年代のアメリカの大学の研究室で、教授と大学院生2人が白紙のメモ用紙と書類ファイルが置かれた木のテーブルを囲んで話し合う様子

長い間、社会福祉と相談の分野は医学の影響を受け、診断と病理に重きを置いてきました。何が悪いのかを見つけて名前を付けることが専門性の証のように考えられ、その結果、支援を受ける人は自分の問題をますます細かく説明する方法ばかりを身につけるようになりました。

(1)カンザス大学の試み
1980年代前半から半ばにかけて、アメリカのカンザス大学のチャールズ・ラップ(Charles Rapp)教授と大学院生たちは、地域の精神保健センターを利用する重度精神疾患のある人を支援する新しい方法を試みました。病院の外の地域社会で暮らせるよう支えるケースマネジメントを行いながら、症状よりも本人の望みと能力に焦点を当てたのです。

(2)名前を得た1989年
1989年、アン・ウィーク(Ann Weick)とラップ、サリバン(W. Patrick Sullivan)、キストハート(Walter Kisthardt)は学術誌『ソーシャル・ワーク(Social Work)』に論文を発表し、この視点を初めて正式にストレングス視点と名付けました。その後、デニス・サリービー(Dennis Saleebey)が1992年から刊行した著書『ソーシャルワーク実践におけるストレングス視点(The Strengths Perspective in Social Work Practice)』が版を重ね、この視点を広く知らしめました。


ストレングス視点の核心となる原則

明るい地域の福祉館のテーブルで、ソーシャルワーカーと中年の利用者が並んで座り、色とりどりの付箋が貼られた白い紙を一緒にのぞき込む様子

サリービーとカンザス大学の研究者たちがまとめた原則は、いくつかの信念に集約されます。

  • ストレングス(Strengths):すべての個人、家族、集団、地域社会は強みと資源を持っています。
  • 挑戦と機会(Challenge and Opportunity):心の傷や病気、試練は有害である一方で、挑戦と成長のきっかけにもなり得ます。
  • 成長の可能性(Growth Potential):人がどこまで成長できるのか、その限界をあらかじめ決めつけません。
  • 協働(Collaboration):目標は専門家ではなく本人が決め、支援はともに取り組む協働関係によって行われます。
  • 環境の資源(Environmental Resources):どの環境にも、家族や隣人、団体のように活用できる資源があります。

これらの原則で注目すべき点は、専門家の立ち位置が変わることです。正解を知っている人ではなく、本人が自分の人生の方向を見つけられるよう、そばで支える伴走者になります。


現場で使われるストレングス視点

小さな店と木々が並ぶ静かな住宅街の道を、ケースマネジャーと若い利用者が話しながら一緒に歩く後ろ姿

ストレングス視点は、具体的な道具と問いかけによって実践されます。

(1)ストレングス・アセスメント
相談を始めるとき、問題のリストだけを作るのではなく、本人の才能や関心事、人間関係、過去に困難を乗り越えた経験、周囲の資源も一緒に書き出してみます。住まい、仕事、余暇、健康といった生活領域ごとに、今持っているものと望んでいるものを並べて整理する方法がよく使われます。

たとえば、長い間仕事を休んできた人が料理好きで、近所の食堂の店主と親しいことがわかれば、その関係と腕前が再び仕事へと向かう最初の足がかりになり得ます。同じ人を失業と孤立という問題だけで見ていたら、見落としていたはずの道です。

(2)強みを引き出す問いかけ
サリービーはいくつかの種類の質問を提案しました。「これまでどうやって乗り越えてこられたのですか?」のようなサバイバルの質問、「つらいとき、誰に頼ることができますか?」のようなサポートの質問、「問題がそれほどでもなかったのはいつでしたか?」のような例外の質問が代表的です。こうした問いかけは、自分でも忘れていた力を思い出させてくれます。

(3)ストレングスモデルのケースマネジメント
ラップが発展させたストレングスモデルは、精神保健分野におけるリカバリー支援の方法として定着しました。ケースマネジャーは事務所よりも本人が暮らす地域で会い、本人が選んだ目標を小さく実行可能な段階に分けて、一つずつ達成できるよう支援します。


ストレングス視点への批判と限界

会議室で、何人かのソーシャルワークの専門家が何も書かれていないホワイトボードの前で真剣に議論し、テーブルにノートとコーヒーカップが置かれている様子

ストレングス視点は大きな影響を与えてきましたが、いくつかの懸念も同時に寄せられてきました。

(1)問題を軽く見る危険
良い点ばかりに目を向けていると、虐待や自傷の危険のように、すぐに対処すべき危機を見逃すおそれがあるという指摘があります。そのため実践者たちは、危険を正確に見極めることと強みを見つけることを並行して行うべきだと強調しています。

(2)構造の問題を個人に押しつける懸念
貧困や差別のように社会構造から生じた困難を、個人の力で乗り越えろというメッセージに変わりかねないという批判もあります。ストレングス視点が社会正義と制度の改善を合わせて語る理由はここにあります。

(3)効果を証明しにくい点
強みや希望は数字で測りにくいため、視点そのものの効果を厳密に検証するのは容易ではないという点も課題として残っています。


ストレングス視点は、支援を必要とする人を直すべき対象ではなく、自分の人生を切り開く力を持った主体として見るよう促します。カンザスの地域精神保健の現場から始まったこの視点は、今では児童、高齢者、家族、地域社会の福祉にまで広く用いられています。もちろん、危機を見逃さない丁寧さと構造的な問題もあわせて見る広い視野が伴ってこそ、本来の力を発揮します。

足りないものを数える代わりに、持っているものを一緒に探すこと、それが人を支える社会福祉の第一歩です。