病院から戻った後も、介護や生活支援、住まい、生計、リハビリの問題が一度に行き詰まっている人を見たことはありませんか。それぞれの機関が自分の役割を十分に果たしていても、当事者にとってはサービスがばらばらのままになっています。このように散在する支援を一つの流れにつなぐ社会福祉実践が、「ケースマネジメント(Case Management)」です。
ケースマネジメントとは、簡単に言えば「複合的なニーズを持つ人が、必要なサービスを途切れることなく受けられるよう、アセスメント・計画・連携・確認・評価を通じて資源を調整する実践方法」を意味します。一人の問題を代わりに解決するというより、複数のサービスがかみ合うように道筋をつくる仕事に近いものです。
本資料では、ケースマネジメントが登場した背景や概念から、主な機能、日常に即したわかりやすい例、そして現場での注意点や限界まで、理解しやすいように整理します。
ケースマネジメントの概念と実践過程
ケースマネジメントとは何か?


ケースマネジメントは、1970~80年代の米国で本格的に広まりました。当時、精神科病院や大規模施設を中心とした保護から離れ、サービスを地域社会へ移す「脱施設化」が進む中で、利用者が複数の機関を一人で訪ね歩かなければならない状況が生まれました。サービスは増えたものの、互いにつながっていなかったため、必要な支援を適切な時期に受けられない「サービスの分断」という問題が深刻化したのです。
この空白を埋めるために登場した役割が、ケースマネジャー(Case Manager)です。ケースマネジャーは、当事者とともにニーズを把握し、適切な資源を探してつなぎ、サービスが実際に継続して提供されているかを確認する調整役です。韓国でも、地域社会保障協議体、希望福祉支援団、障害者のケースマネジメントなど、さまざまな現場で同様の調整方法が活用されています。
- 脱施設化(Deinstitutionalization):施設中心の保護から、地域社会を基盤とするサービスへと転換した流れです。
- サービスの分断(Service Fragmentation):機関ごとに業務が分かれ、利用者が必要な支援を一か所で受けることが難しい状態です。
- ケースマネジャー(Case Manager):アセスメントから連携・確認まで、サービスの流れを調整する実践者です。
ケースマネジメントの主な機能

ケースマネジメントにはさまざまなモデルがありますが、現場では一般に、アセスメント・計画・連携・モニタリング・評価の循環として説明されます。各段階は一度で終わるものではなく、状況が変われば前の段階に戻る、継続的な過程です。
(1)アセスメント(Assessment)
当事者のニーズ、強み、リスク要因に加え、家族・近隣住民・地域の資源まで把握します。診断名や制度上の資格要件だけを見るのではなく、「今、何が最も差し迫っているのか」を整理する段階です。
(2)計画(Planning)
優先順位を定め、具体的な目標を設定し、役割を分担します。誰が何をいつまでに行うのかについて、当事者と機関がともに合意することが重要です。
(3)連携(Linking)
医療、介護や生活支援、住まい、雇用、相談など、必要なサービスを実際の提供機関につなぎます。単なる紹介にとどまらず、利用が始まるまで、ともに道を開いていく仕事に近いものです。
(4)モニタリング(Monitoring)
約束したサービスが途切れていないか、新たな困難が生じていないかを定期的に確認します。小さな変化が大きな危機へと広がる前に、調整できるようにします。
(5)評価(Evaluation)
目標がどの程度達成されたか、計画が今も適切かを振り返ります。必要に応じてアセスメントと計画を見直し、次のサイクルへとつなげます。
身近な例で理解するケースマネジメント

ケースマネジメントは、抽象的な理論よりも、複合的なニーズが重なる日常の場面で、その姿がよく見えてきます。以下は、特定の実在する人物や機関を指すものではない、架空の例です。
[例1]退院後に一人で暮らす高齢者
退院したものの体を動かすことが不自由で、家の中の安全にも不安があり、食事や服薬も一人ではこなしにくい高齢者がいると仮定してみましょう。病院だけでは介護や生活支援を継続できず、介護・生活支援機関だけでは医療の日程を調整できず、生計支援にはまた別の窓口があります。ケースマネジャーは、健康状態と住環境をアセスメントした後、在宅での介護・生活支援、移動支援、食事サービス、必要に応じた住宅修繕などを計画し、各機関につなぎます。その後、訪問や電話でサービスが実際に継続しているかを確認し、状態が悪化すれば計画を再調整します。
[例2]仕事・治療・生活が同時に揺らいだ精神保健サービスの利用者
職場復帰、外来治療、住まいの安定、家族関係が同時に揺らいだ場合にも、同様の構造が見られます。ある機関が治療だけ、別の機関が就職だけ、さらに別の機関が住まいだけを担当すると、当事者は窓口を次々と回り続けなければなりません。ケースマネジメントは、こうしたばらばらの支援を一つの計画にまとめ、治療日程と生活支援が互いに食い違わないよう調整する役割を担います。
どちらの例でも、重要なのは「より多くのサービスを積み重ねること」ではなく、「すでにあるサービスを途切れないようにつなぐこと」です。
現場での注意点と限界

ケースマネジメントは強力な調整手段ですが、万能ではありません。現場でよく直面する限界をあらかじめ知っておくと、実践の方向を定める助けになります。
(1)過重負担と形式化
一人のケースマネジャーがあまりに多くのケースを担当すると、アセスメントや確認が書類上だけのものとなり、実質的な伴走支援が弱まるおそれがあります。量よりも質を重視したバランスが重要です。
(2)資源不足
つなぐ先のサービス自体が地域に存在しなかったり、待機期間が長かったりすると、どれほどよい計画でも実行に移すことは困難です。ケースマネジメントは、資源を「生み出す」制度ではなく、既存の資源を「つなぐ」実践だからです。
(3)当事者の自己決定
専門家が独断で日程を決めると、当事者は再び受け身の立場に追いやられます。目標をともに定め、本人が望まない連携を強要しない姿勢が必要です。これは、当事者の力を高めるエンパワメント(Empowerment)の視点にもつながります。ただし、ケースマネジメントの中心は、あくまでもサービスが途切れないようにつなぐことにあります。
(4)情報共有と秘密保持のバランス
複数の機関が協力するには、一定の情報共有が必要ですが、同時に個人情報の保護と秘密保持も守らなければなりません。何を、誰に、なぜ共有するのかを当事者に説明し、同意を得る手続きが抜けると、信頼が崩れるおそれがあります。
ケースマネジメントは、「支援があるのに届かない」状態を減らすための実践です。サービスをより多く並べるだけでは不十分で、そのサービスが一人の暮らしの中で途切れずにつながるよう調整してこそ、意味が生まれます。資源が不足する現実の中でも、アセスメントと計画、連携と確認を丁寧に繰り返す過程は、危機を前にして道を見失わないための支えになります。
散在する支援を一本の線につなぐこと。それが、複合的な困難の中で日常を立て直す第一歩です。