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観光客が使ったお金はどこへ行くのか、観光漏出(Tourism Leakage)

海外のリゾート地で、ひと晩数十万ウォンのリゾートホテルに泊まり、施設内のレストランで食事をし、空港との往復にもリゾートのシャトルバスを使う旅行を思い浮かべてみましょう。旅行者は大金を使い、その国の観光収入統計にもそれだけの額が計上されます。ところが、その島の漁師や地元の飲食店主には、このお金がほとんど渡っていないかもしれません。観光客が使ったお金が地域にとどまらず、外へ流れ出てしまう現象、それが「観光漏出(Tourism Leakage)」です。

観光漏出とは、簡単にいえば「観光客が目的地で使ったお金のうち、輸入品の購入、外国企業の利益、外部に支払われる賃金や税金などとして地域外へ流れる分」を意味します。経済学で所得が消費の流れから外へ流れ出ることを漏出と呼ぶことに由来し、「漏出効果(Leakage Effect)」とも呼ばれます。

本資料では、観光収入が地域経済に届く仕組みから、お金が流出する経路とその実際の規模、そして漏出を減らす方法まで、順に見ていきます。


観光収入が流出する仕組みと対策

観光客の財布から地域経済へ

熱帯の島の海岸に、大きな近代的リゾートとその隣の小さな村の家々、砂浜に引き揚げられた漁船が見える風景

観光客が宿泊費、食費、土産代として支払ったお金は、すべて目的地の売上として記録されます。しかし、地域経済に実際に残るお金はそれより少なくなります。売上から外部に支払う税金や利益、地域外出身の従業員の賃金、外から仕入れた品物の代金を差し引いた残額が、地域の直接所得になるためです。

このとき流出した分をすべて合わせたものが観光漏出です。表面上の観光収入がどれほど大きくても、漏出が大きければ、地域住民の雇用や所得につながる分は小さくなります。そのため観光学では、観光客数や総収入よりも「いくら地域に残るのか」を重要な問いと考えます。

残ったお金は再び地域内を循環し、新たな消費や雇用を生みます。これを観光乗数効果(Tourism Multiplier Effect)といいます。ひと巡りするたびに一部がまた外へ流出するため、漏出が大きいほど、この効果も急速に弱まります。

観光客の支出が観光事業者を経由し、地域の雇用・賃金や農漁業者・供給業者からの購入、住民や事業者の所得、地域内での再消費につながる経路と、輸入財・サービスの代金や海外へ送金される利益として流出する経路を比較した概念図。
観光支出は地域の賃金・調達・消費につながりますが、輸入財・サービスの代金や、実際に海外へ送金される利益などとして目的地の外へ流出することもあります。海外流出の代表的な経路を簡略化した図で、矢印の大きさは金額や割合を示していません。出典: World Bank, The Future of Pacific Tourism (2022), p.29; UNEP·UNWTO, Tourism in the Green Economy (2012), pp.101·137.

お金が流出する二つの経路

ビーチリゾートの厨房の裏に、輸入ワインの箱や配送用の箱、貨物用パレットが積まれている様子

観光漏出は通常、お金が流出する仕組みによって二つに分けて説明されます。これに、表面には現れにくい費用が加わります。

(1)輸入漏出
観光客が求める食べ物、飲料、家具、設備を地域内で調達できず、外国から輸入する際に生じます。島のリゾートが輸入ワインや輸入牛肉を提供すれば、その代金のかなりの部分は生産国へ戻ります。

(2)輸出漏出
ホテル、航空会社、旅行会社が外国資本に所有されている場合に生じます。これらの企業が得た利益は本社のある国へ送金され、地域には再投資されません。

(3)見えない漏出
リゾート建設に使った輸入資材や設備、海外での宣伝費、開発時に借り入れた対外債務の元利返済のように、観光客の目には見えなくても、継続的に外へ出ていくお金もあります。

  • 輸入漏出(Import Leakage):観光需要を満たすために外部から購入した財やサービスの代金です。
  • 輸出漏出(Export Leakage):外国企業や投資家が利益を自国へ持ち帰ることで生じる流出です。
  • 直接所得(Direct Income):観光支出から漏出を差し引き、最初に地域に残る所得です。

数字で見る漏出とオールインクルーシブ旅行

塀の内側にあるオールインクルーシブ・リゾートのプールと、塀の外にある客のいない閑散とした地元の果物市場が対照的に映る場面

観光漏出は、特に産業基盤の小さい開発途上国や島国で大きくなります。国連環境計画(UNEP)が紹介した研究の推計によると、タイでは観光客が使ったお金の約70%が国外へ流出し、カリブ海諸国では約80%、インドでは約40%と推計されました。カリブ海諸国では、100ドルを使っても地域に残るお金は20ドル程度だということです。

オールインクルーシブ・パッケージの落とし穴

航空券、宿泊、食事、遊びをひとまとめにして販売するオールインクルーシブ・パッケージは、漏出を大きくしやすい方式としてよく挙げられます。同じ資料によると、こうしたパッケージ旅行では、旅行者の支出の約80%が航空会社、ホテル、国際的な旅行会社へ流れます。これらの企業の本社は、旅行者の出身国にあることが多いのです。宿泊客がリゾートの外へ出ないため、地元の飲食店や市場、タクシーは客を迎える機会を得にくくなります。

島国が特に影響を受けやすい理由

島は土地が狭く人口も少ないため、食料、燃料、建設資材の大半を外から調達しなければなりません。観光客が増えるほど輸入も増え、稼いだ外貨のかなりの部分が再び流出する構造が定着しやすくなります。


漏出を減らす方法と残された課題

海辺の小さな家族経営の宿のテラスで、木の食卓に地元の魚や熱帯の果物、手編みのかごが並べられている様子

観光漏出を減らす鍵は、観光客のお金が地域内でより長く、より多くの回数循環するようにすることです。そのために、さまざまな国や地域が次のような方法を取り入れています。

(1)地域内での調達を増やす
ホテルや飲食店が地域の農漁業者の食材や地元の職人の工芸品を購入できるようにつなぐことで、輸入漏出が減ります。

(2)地域の雇用と所有を拡大する
住民を管理職に就けるまで育成し、住民が経営する宿泊施設や旅行会社を育てれば、賃金や利益が地域に残ります。

(3)地域と利益を分かち合う旅行
住民が自ら企画・運営するコミュニティを基盤とした観光は、収益が村に還元されるように設計されます。

ただし、漏出を完全になくすことは現実的ではありません。航空機や医療機器のように輸入せざるを得ないものもあり、外国資本が入ることで初めて施設が整備される地域もあります。そのため目標は、漏出をなくすことではなく、地域が対応できる範囲で減らし、地域に残る分を増やすことにあります。旅行者も、地域の宿泊施設や飲食店、市場をもう一度利用するだけで、この流れを後押しできます。


観光漏出とは、観光客が使ったお金のうち、輸入品や外国企業の利益、外部への費用として地域外へ流出する分です。観光が地域を潤すかどうかを左右するのは、観光収入の大きさよりも、そのお金がどれだけ地域にとどまり、再び循環するかです。

華やかな観光収入の数字の背後で、そのお金が誰の手に残るのかも問うこと。それが、地域を活性化する持続可能な観光の第一歩です。