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変えれば勝てるという逆説、モンティ・ホール問題(Monty Hall Problem)

三つのドアのうち、一つの後ろには車が、残りの二つの後ろにはヤギがいます。私が1番のドアを選ぶと、正解を知っている司会者が3番のドアを開けてヤギを見せ、こう尋ねます。「2番のドアに変えますか?」残ったドアは二つなので、どちらも確率は半々だと感じられますが、実は変えるほうが二倍も有利です。この直感と正解の食い違いを示す有名なパズルが「モンティ・ホール問題(Monty Hall Problem)」です。

モンティ・ホール問題とは、簡単にいえば「新しい情報が与えられたとき、確率をどのように計算し直すべきか」を問う、条件付き確率の代表的な問題です。その名前は、1963年に始まったアメリカのテレビゲーム番組『取引しましょう(Let's Make a Deal)』の司会者、モンティ・ホールに由来します。

本資料では、モンティ・ホール問題のルールから、変えるほうが有利な理由、多くの専門家が間違えた論争、そしてこのパズルが日常生活に与える教訓まで、順に見ていきます。

モンティ・ホール問題の三つの場合の比較。最初に1番のドアを選ぶと、車が1番にある場合は変えると負け、2番または3番にある場合は変えると勝つ。司会者が標準のルールに従う場合、選択を維持する勝率は1/3、必ず変える戦略の勝率は2/3である。
最初の選択を1番のドアに固定した、同じ確率で起こる三つの場合。司会者が正解を知っていて、選ばれていないヤギのいるドアを必ず開け、選択を変える機会を与えるという標準のルールでは、必ず変える戦略は2/3の確率で勝てます。出典: UC San Diego数学科、The Monty Hall Problem.

モンティ・ホール問題の正解と勘違いの根源

モンティ・ホール問題とは?

暖かな照明が当たる昔のテレビゲーム番組のステージに、色とりどりの閉じたドアが三つ並んでいる様子

この問題は、1975年にアメリカの統計学者スティーブ・セルヴィン(Steve Selvin)が学術誌『アメリカン・スタティスティシャン(The American Statistician)』に寄せた手紙で初めて紹介されました。続けて送った二通目の手紙で、彼はこれを「モンティ・ホール問題」と名づけました。正解が成り立つには、司会者が守るルールが明確でなければなりません。

  • 司会者の知識(Host Knowledge):司会者は、どのドアの後ろに車があるかを知っています。
  • 必ずドアを開ける(Always Opens a Door):司会者は、参加者が選ばなかったドアの中から必ず一つを開けます。
  • ヤギだけを見せる(Always Reveals a Goat):司会者は、車のあるドアを絶対に開けません。
  • 変える機会(Always Offers a Switch):司会者は、残ったドアに選択を変える機会を必ず与えます。

(1)もっと古い双子のパズル
モンティ・ホール問題と数学的に同じパズルは、それ以前にもありました。1959年、マーティン・ガードナー(Martin Gardner)は『サイエンティフィック・アメリカン(Scientific American)』のコラムで、三人の囚人のうち一人だけが恩赦を受ける「三囚人問題」を紹介しました。さらにさかのぼると、1889年にフランスの数学者ジョゼフ・ベルトラン(Joseph Bertrand)が提示した「ベルトランの箱の逆説」も、同じ勘違いを扱っています。


変えると3分の2になる理由

ゲーム番組のステージにある三つのドアのうち、右のドアだけが開き、わらの上に立つ白いヤギが見えていて、残りの二つのドアは閉じている様子

最初に1番のドアを選んだとき、車がその後ろにある確率は3分の1で、残りの二つのドアのどちらかにある確率は3分の2です。司会者がヤギのいるドアを一つ開けても、この事実は変わりません。司会者は正解を知ったうえで、意図的にヤギのいるドアを選んで開けたため、最初に選んだドアについては新しい情報が得られないのです。結局、残りの二つのドアに集まっていた3分の2の確率が、閉じたままの一つのドアにそのまま集まります。

(1)三つの場合に分けて考える
車が1番のドアにあれば、変えると負けます。車が2番か3番のドアにあれば、司会者が残ったヤギのいるドアを開けてくれるので、変えると必ず勝ちます。三つの場合のうち二つで勝つので、変えるほうの勝率は3分の2です。

(2)ドアが百万個あったら
マリリン・ボス・サバント(Marilyn vos Savant)は、ドアが百万個ある場合を想像してみるよう勧めました。自分が一つのドアを選んだ後、司会者が車のあるドアを避け、残りのドアを一つだけ残してすべて開けたなら、その残った一つのドアに変えるほうがよいと、誰もが簡単に感じ取れます。


天才も間違えたモンティ・ホール論争

窓から日が差し込む1990年代の雑誌社の机に、手書きの手紙と開封済みの封筒が山のように積まれ、タイプライターとデスクライトが置かれている様子

この問題が広く知られるようになったのは、1990年9月、アメリカの雑誌『パレード(Parade)』の質問回答コラム「マリリンに聞いてみよう(Ask Marilyn)」がきっかけでした。ボス・サバントが変えるほうが有利だと答えると、約1万通の手紙が殺到し、そのうち1,000通近くは博士号を持つ人からのものでした。その大半は、彼女の答えが間違っていると主張していました。

[事例1]コンピューターの結果を見て初めて納得した数学者

史上最も多くの論文を残した数学者の一人とされるポール・エルデシュ(Paul Erdős)も、最初は正解を信じませんでした。彼は、コンピューターでゲームを何度も繰り返した結果を見て初めて、変えるほうが有利だという事実を受け入れたと伝えられています。

[事例2]人間より優れたハト

2010年、アメリカのある研究では、ハトにモンティ・ホールのゲームを繰り返し行わせました。ハトは経験を積むと、ほぼ必ず選択を変えるようになりましたが、同じ課題を与えられた人間は、最後まで最善の選択にたどり着きませんでした。人間を対象とした別の研究でも、参加者228人のうち、ドアを変えたのはわずか13%でした。


司会者のルールが答えを変える

明るい廊下で、同じ見た目の閉じた二つのドアの前に立ち、顎に手を当ててどちらを選ぶか悩んでいる女性の後ろ姿

モンティ・ホール問題の核心は、ドアを開けた人が正解を知っていたという点です。もし司会者が正解を知らずに適当なドアを開け、たまたまヤギが出てきたのなら、変えても変えなくても勝つ確率は半々になります。同じ場面でも、情報が生まれた過程によって確率が変わるのです。

(1)実際の放送は違いました
モンティ・ホール本人は、1991年の『ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)』のインタビューで、この問題を正確に理解していることを示しました。ただし、実際の放送ではルールに縛られず、参加者の心理を利用してゲームを進めていたため、この計算がそのまま当てはまるわけではないと付け加えました。

(2)日常生活で得られる教訓
新しい情報を受け取ったら、その情報が誰によって、どのようなルールで選別されたのかを、まず考える必要があります。最初に選んだものをなかなか手放せない気持ちは、判断を曇らせがちです。


モンティ・ホール問題は、残った選択肢が二つだからといって、確率がいつも半々になるわけではないことを示しています。賢い人たちさえ間違えたこのパズルは、直感がいかに簡単に情報の出どころを見落とすかを気づかせてくれます。

目の前の結果よりも、その情報が生まれた過程を問うこと。それが、確率を正しく読み解くための第一歩です。