会議で数億ウォンの契約は拍手とともに数分で通ったのに、オフィスの給湯室にどのコーヒーを置くかを決めるのには1時間をはるかに超えた、という経験はありませんか。本当に重要な決定は急いで済ませ、些細なことで声が大きくなる光景は、どの組織でも珍しくありません。
この現象には名前があります。イギリスの歴史学者シリル・ノースコート・パーキンソン(Cyril Northcote Parkinson)が1957年に出した本で紹介した、些末の法則(Law of Triviality)です。一つの議題に使う時間は、その議題にかかる金額に反比例する、というのが核心的な主張です。
本資料では、この法則が生まれた風刺的な会議の場面から、人が小さなことで饒舌になる理由、ソフトウェアの世界で得た愛称、そして会議でこの罠を避けるコツまで、順にまとめます。
大きな議題は素通りし、小さな議題に居座る会議
原子炉と自転車置き場の話

パーキンソンは『パーキンソンの法則(Parkinson’s Law and Other Studies in Administration)』の一章で、架空の財務委員会を描いています。議題は三つです。一つ目は原子炉の建設にかかる1,000万ドルの契約、二つ目は事務職員のための自転車置き場を2,350ドルで建てること、三つ目は委員会のコーヒーなどの茶菓代です。
原子炉の議題は大きすぎて専門的なので、委員のほとんどが理解しないまま、約2分30秒で通ります。一方、自転車置き場を前にすると、屋根をアルミにするか、石綿にするか、亜鉛メッキ鉄板にするか、そもそも建てないほうがよいのではないかをめぐって、45分間も議論が続きます。それでも節約できる金額はわずかだろう、とパーキンソンは皮肉ります。
この場面は実は、本の題名にもなった「仕事は与えられた時間いっぱいまで膨張する」というパーキンソンの法則から枝分かれした、脇道の話として紹介されています。ですから、些末の法則は単独の冗談というより、組織の仕事の進め方を眺めた一連の観察の一つとして読むのがふさわしいでしょう。
コーヒーの議題はさらに長引いて1時間15分を占め、結局、秘書に資料をもっと集めてくるよう任せたまま、次の会議に持ち越されます。この話は実際の調査結果ではなく、官僚組織を皮肉った風刺ですが、読む人の誰もが似た会議を思い浮かべるため、長く生き残りました。

小さなことで話が多くなる理由

自転車置き場の話に説得力があるのは、人の心理を正確に突いているからです。原子炉はあまりに馴染みがなく、専門家がうまくやっているだろうと信じて通り過ぎてしまいますが、自転車置き場は誰でも頭に思い描けるので、一言ずつ付け加えたくなります。
(1)理解できるという自信
金額が自分の生活経験の範囲にあり、形も思い浮かべられると、人は自分の意見が役に立つと感じやすくなります。知らないことには口を閉ざし、知っていることには饒舌になるわけです。
(2)貢献したという痕跡
会議で何も言わないと、ただ席を埋めただけのようで不安です。大きな議題がすでに過ぎていたら、小さな議題ででも、参加した証拠を残したくなります。
私たちの日常にも同じ場面はよくあります。新製品の戦略を決める場では静かなのに、イベントのお弁当のメニューやグループチャットの名前を決めるときには意見が噴き出す、といった具合です。間違えても負担が小さく、誰にでも好みがあるので、話しやすいからです。
実験研究も似た傾向を示しています。2021年の経済学の実験で、参加者は情報を少し集めれば済む小さな決定では集めすぎ、たくさん集める必要のある大きな決定では早く止めすぎる様子を見せました。大きな問題は複雑で最初から疲れてしまい、小さな問題は理解しやすいので長く抱え込んでしまう、という説明です。
ソフトウェアの世界の愛称、バイクシェッディング

この法則は、自転車置き場の話から取ったバイクシェッディング(bike-shedding)という名前で、ソフトウェア開発者のあいだに広まりました。1999年にデンマークの開発者ポール=ヘニング・カンプ(Poul-Henning Kamp)がBSDオペレーティングシステムの開発コミュニティに「自転車置き場が何色だろうと、なぜ私が気にしなければならないのか?」という文を投稿したことで、広く知られるようになりました。以後、この言葉はソフトウェア開発全般で使われるようになりました。
開発の現場では、新機能の構造は数行で済ませるのに、変数名、コードの見た目、画面の色といった些細な問題で議論が長引くことがよくあります。構造を理解するには長い勉強が必要ですが、名前や色は誰でも意見を出せるからです。
こうしたことが繰り返されると、肝心の設計の議論は浅くなり、チームの力だけが抜けていきます。些細な問題は簡単に結論が出ないのに、誰もが一言加えられるため、論争が際限なく続くからです。
似た原理を別の名前で呼ぶ法則もあります。
- セイヤーの法則(Sayre’s Law):論争では、感情の強さは争点の価値に反比例するという主張です。
- ワドラーの法則(Wadler’s Law):プログラミング言語の設計の議論が、意味よりも見た目である文法に集中するという指摘です。
会議で罠を避けるコツ

法則を知ったからといって、些末な議論をすべて止める必要はありません。小さなことの積み重ねが、働く体験を変えることもあるからです。問題は、重要度と時間のバランスが崩れることですから、バランスを取り戻す仕掛けをいくつか置けば十分です。
(1)時間を先に配分する
議題ごとに使う時間の上限をあらかじめ決め、大きな議題にまず十分な時間を割り当てます。
(2)資料を先に読んでくる
複雑な議題は会議の前に資料を共有して、馴染みがないという理由でそのまま通り過ぎることを減らします。
(3)小さな決定は任せる
元に戻しやすく影響の小さい決定は担当者一人に任せ、ほかの人は意見を短く伝えます。
もう一つ覚えておきたいのは、会議を進める人の役割です。進行役が、議題の重みに比べて今の議論は長くなっていると穏やかに指摘すれば、参加者も気兼ねなく次に進めます。議論を断ち切るのではなく、重要な議題に使う力を残しておくことなのだ、という点を共有するとよいでしょう。
会議の途中で議論が長くなってきたと感じたら、自分に一つだけ問えばよいのです。この問題が全体の目標にどれだけ大きな違いを生むかを考え、小さければ次の議題に移ればよいことです。
大きなことの前では一歩踏み込んで吟味し、小さなことの前では一歩引いて任せられる心。それが些末の法則の第一歩です。