本文へ移動
雑学書庫好奇心が集まる場所
日本語

ふたを開けると泡が立つ理由、ヘンリーの法則(Henry's Law)

炭酸飲料のふたを回した瞬間、「プシュッ」という音とともに、小さな泡がボトルの内側から絶え間なく上がってきます。閉まっているときは透明で静かだった飲み物が、ふたを開けただけでこれほど変わるのはなぜか、気になったことがあるかもしれません。変わったのはボトルの中の気体ではなく、ボトルの中の圧力です。

この現象をひとつの式で説明したのがヘンリーの法則(Henry's Law)です。一定の温度で液体に溶ける気体の量は、その液体に接している気体の圧力に比例するという法則で、飲み物の一本から深い海の潜水まで幅広く当てはまります。

この資料では、ヘンリーの法則が何を言っているのか、ダイバーの体内で何が起きているのか、そしてこの法則がうまく当てはまらないのはどんなときかを順に見ていきます。


圧力が気体を液体の中に留めておく仕組み

ふたを開けた瞬間に起きること

木のカウンターの上に、細かい泡が上がる炭酸水のグラスと、金属のふたが付いた緑のガラスびんが並んでいる様子

炭酸飲料は、二酸化炭素を高い圧力で押し込んで飲み物に溶かしたものです。この方法のルーツは、18世紀後半にイギリスのジョゼフ・プリーストリー(Joseph Priestley)が二酸化炭素を水に溶かして炭酸水を作ったことにさかのぼります。ボトル上部の空間には大気圧より高い圧力の二酸化炭素が満たされていて、その圧力が飲み物の中に多くの気体を留めています。

ふたを開けると、上の圧力が大気圧まで一気に下がります。新しい圧力ではそれだけ多くの気体を溶かしておけないため、余った二酸化炭素が小さな泡になって抜け出します。これが泡の正体です。振ってから開けた飲み物がより激しく噴き出すのは、振っている間にできた小さな泡が種になり、溶けていた気体が一度に集まってくるからです。開けたままの飲み物が時間とともに気が抜けるのも同じ理由で、気体が新しい圧力での平衡量に達するまで抜け続けるためです。

ヘンリーの法則を説明するインフォグラフィック。いちばん上に「ヘンリーの法則」というタイトルと、圧力が気体を留めるという副題があります。閉じたびん 高い圧力 気体がたくさん溶ける、ふたを開けると圧力が一気に下がる、泡の発生 余った気体が抜け出す、が右向きの矢印でつながり、いちばん下の帯には溶ける量は圧力に比例すると書かれています。
閉じたびんのふたを開けると圧力が下がり、余った気体が泡になって抜け出す過程と、溶ける量が圧力に比例するという法則をまとめた要約です。

ヘンリーの法則が言っていること

明るい実験台の上で、同じガラスのフラスコ三つが細い管で小さなガスボンベにつながり、水の中に小さな泡が見える様子

この法則は、1803年にイギリスの化学者ウィリアム・ヘンリー(William Henry)が、圧力と温度を変えながら水に溶ける気体の量を測った実験から生まれました。結果は同じ年にイギリス王立協会の学術誌に掲載され、彼は圧力を2倍、3倍にすると水が吸収する気体の量も2倍、3倍になることを明らかにしました。式ではC = k × Pと書き、気体の濃度Cが圧力Pに正比例するという意味です。たとえば圧力が1気圧から4気圧に上がると、同じ温度で溶ける二酸化炭素の量も4倍になります。

  • 溶解度(Solubility):一定量の液体に溶かすことのできる気体の量のことです。
  • 分圧(Partial Pressure):複数の気体が混ざっているとき、そのうちの一つの気体が占める圧力で、法則は全体の圧力ではなく気体一つひとつの分圧について当てはまります。
  • ヘンリー定数(Henry's Law Constant):上の式のkにあたる値で、気体と液体の組み合わせごとに異なり、温度によっても変わります。

同じ圧力でも、水によく溶ける気体と溶けにくい気体があるのは、まさにこの定数が違うからです。法則が教えてくれるのは、どれだけよく溶けるかではなく、圧力が2倍になれば溶ける量も2倍になるという比例関係です。


ダイバーの体内で起きること

澄んだ青い海で、黒いウェットスーツのダイバーがロープに沿ってゆっくり浮上し、小さな泡が上へ昇っていく様子

ヘンリーの法則は、水中で働く人の安全とも直接つながっています。水深が10メートル深くなるごとに圧力はおよそ1気圧ずつ増え、空気を吸うダイバーの血液や組織には、増えた圧力の分だけ窒素がより多く溶け込みます。

問題は浮上するときです。あまりに速く水面へ上がると圧力が急に下がり、組織に溶けていた窒素が抜け出せないまま血管の中で泡になってしまいます。これが潜水病と呼ばれる減圧症(Decompression Sickness)で、関節の痛みや皮膚の発疹から、重い場合は麻痺まで引き起こすことがあります。

(1) ゆっくり浮上する
ダイバーは決められた速さでゆっくり浮上し、途中で止まって休みながら、体内の窒素が呼吸で抜ける時間をつくります。

(2) 窒素を別の気体に替える
とても深い場所で作業するときは、窒素の代わりにヘリウムを混ぜた気体を使うこともあります。ヘリウムは窒素より血液に溶けにくいからです。

(3) 圧力を元に戻す
すでに症状が出ている場合は、圧力を高めた治療用の部屋に入って体内の泡を再び溶かし、ゆっくり圧力を下げます。

この三つはいずれも、圧力が下がる速さを調節するか、気体が溶けにくくなるようにするという点で、同じ原理に沿っています。式ひとつが説明するのは、泡立つ飲み物だけでなく、人の体の中で起きていることでもあります。


法則が当てはまらない場合

白いテーブルの上に、氷の入った炭酸水のグラスと常温の炭酸水のグラスが並び、泡の量が違う様子

ヘンリーの法則は、条件がそろえばよく当てはまる法則であり、どこでも通用するわけではありません。実際の溶液では、気体分子が液体分子とどう絡み合うかによって、比例関係が少しずつずれるからです。どんなときにずれるかを知っておけば、値を読み違えずにすみます。

(1) 温度が変わるとき
同じ圧力でも、液体が温まると気体は概して溶けにくくなります。ぬるくなった炭酸飲料が気が抜けやすいのも、ヘンリー定数が温度によって変わるからです。

(2) 液体と化学反応を起こすとき
塩化水素やアンモニアのように、水と反応してイオンに分かれる気体は、単純な比例関係から外れます。溶けた気体の一部が別の物質に変わっているためです。

(3) 圧力がとても高いときや濃度が濃いとき
気体がきわめて高い圧力にさらされたり、多く溶けて溶液が薄くなくなったりすると、比例関係が崩れます。法則は、薄い溶液とそれほど大きくない圧力で最も正確です。

一方、深い水ほど圧力が高く、二酸化炭素が多く溶けていることがあるという点は、自然界でも危険になります。1986年にカメルーンのニオス湖では、湖の深部にたまっていた二酸化炭素が突然噴き出し、少なくとも1,700人が亡くなりました。気体が溶けているということは、いつでも放出されうるということでもあります。

法則がどこまで当てはまるかを知ることは、法則そのものを知ることと同じくらい大切です。条件をわきまえて使う法則がもっとも信頼できます。目に見えない気体が圧力によってどれだけ留まり、どれだけ去っていくかを読み取る目、それがヘンリーの法則の第一歩です。

この記事をPDFで手元に

今読んでいる記事の、選択した言語の版を購入できます。

US$1.00
選択中の言語: 日本語

US$1.00 · 1記事・1言語

一度購入すれば、同じアカウントでログインして購入した版を再ダウンロードできます。

PDFサンプルを見る ↗本文は引き続き無料で読めます。サンプルでPDFの文字やレイアウトを確認できます。

販売者情報

商号
아카이지
代表者
안호원
事業者登録番号
530-02-04118
通信販売届出番号
2026-경기군포-0626
届出先
경기도 군포시
事業所所在地
경기도 군포시 산본천로 119-9, 1109동 405호 (산본동, 주공아파트)
ホスティング提供者
카페24(주)
お問い合わせメール
sgjjojo@gmail.com
お問い合わせ電話番号
010-4194-0821

事業者情報の確認(韓国公正取引委員会)