たんぱく質の含有量がどちらも20gと書かれた二つの食品があるとします。一方は卵や牛乳のように体が必要とする材料をバランスよく備え、もう一方は特定の材料が足りないとしたら、二つのたんぱく質が体の中で果たす働きは同じではありません。たんぱく質は量だけでは価値を言い尽くせず、どんな材料でどれだけできているか、体がそれをどれだけ受け入れるかが一緒についてくるからです。
この違いを一つの数字で表そうとする方法が、消化率補正アミノ酸スコア(Protein Digestibility Corrected Amino Acid Score、PDCAAS)です。1989年に国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同専門家協議がたんぱく質の質を評価する方法として勧告し、その後長いあいだ、たんぱく質の質を評価する基準のように使われてきました。点数は最高の1.0から0に近い値までで表します。
この資料では、PDCAASのもとになる必須アミノ酸の考え方から、計算方法、食品ごとに点数が分かれる理由、限界とそれを補うために出た新しい指標、そして食卓でこの点数を活用する方法まで、順に整理します。
たんぱく質の質を点数で読む方法
たんぱく質の質を分ける必須アミノ酸

たんぱく質はアミノ酸が長くつながった物質で、人の体はそのうち九種類を自分では十分に作れないため、食べ物から取らなければなりません。これを必須アミノ酸と呼びます。たんぱく質を食べると、体はそれをアミノ酸に細かく分けて吸収し、必要なたんぱく質を新しく組み立てるのに使いますが、このとき九種類の材料のうち一つでも足りないと、その材料に合わせて作業が止まってしまいます。
そのため、たんぱく質の質は二つの問いに分かれます。第一に、必須アミノ酸が体の必要量に比べてバランスよく入っているか。第二に、食べたたんぱく質が実際にどれだけ消化されて体に入ってくるか。PDCAASはこの二つの問いの答えを掛け合わせて、一つの点数にしたものです。
PDCAASはどう計算するのか

計算は大きく三段階です。まず、食品のたんぱく質1gに含まれる必須アミノ酸それぞれの量を基準たんぱく質の量と比べ、比率を求めます。基準は2〜5歳の子どものアミノ酸必要量パターンをもとに定められていて、必要量の大きい子どもに合うたんぱく質なら他の年齢にも十分だと考えたためと伝えられています。こうして求めた比率のうち最も低い値がアミノ酸スコアです。最後に、この値にたんぱく質の真の消化率を掛けます。
(1)いちばん足りない材料を探す
比率が最も低いアミノ酸を制限アミノ酸(limiting amino acid)と呼びます。木桶の水の高さがいちばん低い板に合わせて決まるように、たんぱく質の点数はいちばん足りないアミノ酸が決めます。
(2)消化率で補正する
カナダ保健省が案内している例を見ると、インゲン豆の一種であるピント豆は、トリプトファンの比率が0.80で最も低く、真の消化率は73%でした。したがって点数は0.80に0.73を掛けた0.58です。アミノ酸の構成がかなり良くても、消化が悪ければ点数が下がることがこの例からわかります。
(3)1.0を超えたら1.0にそろえる
計算結果が1.0を超えるたんぱく質は、1.0に切って表示します。必要量を超えたアミノ酸は使われないと考えられているからです。

食品ごとに点数が分かれる理由

点数が1.0の代表的な食品は、カゼイン(牛乳のたんぱく質)、大豆たんぱく分離物、卵白です。牛肉は0.92前後、小麦のグルテンは0.25と低めだと伝えられています。小麦グルテンは、リシンという必須アミノ酸が大きく不足していることが主な理由です。
- 動物性食品(Animal Protein):卵、牛乳、肉は九種類の必須アミノ酸が人の必要量に近く入っていて消化もよいため、点数が高めです。
- 穀類(Cereal Grains):リシンが少なく、制限アミノ酸になることが多いです。
- 豆類(Legumes):リシンは豊富ですが、メチオニンやトリプトファンのような材料が制限アミノ酸になりやすく、動物性食品より消化率が低めです。
点数が低いからといって、その食品が悪いという意味ではありません。小麦粉の食品やご飯のように、たんぱく質の質は低くても、私たちの食事でエネルギーとたんぱく質をコンスタントに満たしてくれる食品が多いからです。また、同じ食品でも加工や調理によって消化率が変わり、調査の方法や試料によって報告される点数も少しずつ違います。そのため、食品ごとの点数は正確な一点というより、おおよその水準として読むのが適切です。
限界と新しい指標、食卓での使い方

PDCAASにはいくつか弱点が挙げられてきました。消化率をたんぱく質全体に対する一つの値でしか補正せず、その値も糞便をもとに測るため、実際に吸収されたアミノ酸の量を正確に反映しにくいという指摘があります。また、1.0を超える分はすべて切り捨てるため、非常に良いたんぱく質どうしの差が見えなくなります。
こうした点を改めるため、FAOは2013年の報告書で、PDCAASに代わる新しい指標として消化可能必須アミノ酸スコア(Digestible Indispensable Amino Acid Score、DIAAS)を勧告しました。小腸の末端部である回腸で測った消化率をアミノ酸一つひとつに当てはめ、1.0を超える値も原則として切りません。
(1)足りない材料を互いに補う
穀類に足りないリシンは豆類が補い、豆類に足りないメチオニンは穀類が補います。ご飯に豆を混ぜたり、パンにレンズ豆のスープを添えたりして混ぜて食べると、一食のたんぱく質の構成がよくなります。
(2)点数一つで判断しない
たんぱく質の質は一食ではなく一日の食事全体で満たされるという点と、脂質や食物繊維などほかの栄養素も一緒に考える必要があるという点を覚えておいてください。
たんぱく質は、どれだけ食べるかだけでなく、どんな材料でできていて、体がどれだけ受け入れるかによっても価値が決まります。その違いを点数で読み、食卓で互いに補い合うこと、それがPDCAASを正しく使うための第一歩です。