地図でハワイ諸島を見ると、島々が南東から北西へ斜めに一列に並んでいます。さらに不思議なのは、南東端のハワイ島では今も溶岩が流れているのに、北西へ行くほど島が古くなって削られ、ついには海底の山へと沈んでいくという事実です。このように島を次々と生み出す、地下の熱い場所があります。それが「ホットスポット(Hotspot)」です。
ホットスポットとは、簡単に言えば、プレートの境界とは関係なく、地下深くの異常に高温なマントルがマグマを供給して火山活動が起こる場所を意味します。ほとんどの火山がプレート同士がぶつかったり離れたりする場所に集まっているのとは違い、ホットスポット火山はプレートのど真ん中にもできるという点が特別です。
本記事では、ホットスポットという考え方がどのように生まれたのかから、火山島の列ができる仕組み、地球の代表的なホットスポット、そしてまだ解決していない論争まで、順に見ていきます。
プレートの上に火山の足跡を残す地下の火種
ホットスポットという考え方の始まり

ホットスポットという概念は、ハワイ諸島の謎を解こうとする試みから始まりました。
(1)ツゾー・ウィルソンのアイデア
1963年、カナダの地質学者ジョン・ツゾー・ウィルソン(John Tuzo Wilson)は、ハワイ諸島はほとんど動かない熱い場所の上を太平洋プレートがゆっくり通過することでできたと説明しました。プレートは動き、熱源はその場にとどまるので、火山は一列に並ばざるを得ないという考えです。
(2)マントルプルームとの結びつき
続いて、ホットスポットの下には、マントルと核の境界付近から高温の物質が柱のように上昇するマントルプルーム(mantle plume)があるという仮説が登場しました。今日、ホットスポット仮説はこのマントルプルーム仮説とほぼ一体のものとして扱われています。
(3)プレート境界の火山との違い
アリューシャン列島のような火山島の列は、一方のプレートが他方のプレートの下に沈み込む沈み込み帯でできます。一方、ホットスポット火山はプレート境界と関係のない場所でできるという点で、根本から異なる火山とみなされます。
火山島の列ができる仕組み

ホットスポットの仕組みは、ベルトコンベヤーの上に置かれた紙に、ろうそくの炎が同じ場所ですすの跡を残していく様子に似ています。
(1)その場にとどまる熱源と動くプレート
ホットスポットの上にあるプレートでは、マグマが突き破って上がってきて火山ができます。プレートが動くとその火山は熱源から離れて活動を止め、ホットスポットの上には新しい火山が成長します。
(2)年代順に並んだ島々
その結果、火山は年代順に列をなします。ハワイ諸島の主な島々は約40万年前から510万年前の間にでき、北西へ行くほど古くなって侵食が進んでいます。ハワイ島南東の沖合では、カマエフアカナロア海山(旧称ロイヒ)が今も海中で成長しています。
(3)海の中へ続く長い尾
ハワイ・天皇海山列は、80を超える海底火山が約6,200kmにわたって連なる巨大な列です。北端の天皇海山群は3,900万年前から8,500万年前にできたもので、すべて海の底に沈んでいます。
ホットスポット火山の多くは玄武岩質のマグマを噴き出すため、沈み込み帯の火山ほど爆発的ではありません。ハワイの火山が流れ下る溶岩で有名なのも、そのためです。

地球の代表的なホットスポット

ホットスポットがいくつあるかは学者によって考えが異なり、約20個から数千個まで推定が分かれますが、ほとんどは数十個程度とみています。
- ハワイ・ホットスポット(Hawaii hotspot):最もよく知られたホットスポットで、ハワイ島のキラウエアやマウナロアなどの活火山を生み出しました。
- アイスランド・ホットスポット(Iceland hotspot):プレートが離れていく大西洋中央海嶺の上にホットスポットが重なっているため、島全体に火山や温泉が多くあります。
- イエローストーン・ホットスポット(Yellowstone hotspot):大陸の上にあるホットスポットです。マグマが大陸地殻を溶かして粘り気の強い流紋岩質マグマができるため、地質の歴史でも指折りの強力な噴火を起こしてきました。西へ行くほど古いカルデラの跡が連なっています。
- レユニオン・ホットスポット(Réunion hotspot):インド洋のレユニオン島で活発な火山活動を続けているホットスポットです。
このように、ホットスポットは海のど真ん中にも大陸のど真ん中にも現れ、置かれた場所によって火山の性格が大きく変わります。
まだ解けていないホットスポットの謎

ホットスポットはプレートの動きを説明する強力な証拠として使われてきましたが、研究が深まるにつれて新たな疑問も生まれてきました。
(1)海山列はなぜ折れ曲がったのか
ハワイ列島と天皇海山列は約120度の角度で折れ曲がっています。長い間、約4,700万年前に太平洋プレートの移動方向が変わった跡だと説明されてきましたが、2003年ごろ、ホットスポットそのものが動いたとする研究が発表されました。現在では、プレートの方向転換にホットスポットのわずかな移動が加わったという説明が最も広く受け入れられています。
(2)ホットスポットは本当に固定されているのか
当初、ホットスポット同士は互いに固定されていると考えられていましたが、ハワイとアイスランドのように互いに動いているように見えるホットスポットが確認されました。そのため、マントルプルームは当初考えられていたより複雑で、それぞれ別々に動いているとする見方が有力になりました。
(3)マントルプルームは本当に存在するのか
ホットスポットの下のマントルが特別に熱いわけではなく、プレートが薄かったり弱かったりする場所で浅い深さのマグマが上がってくるだけだという反論もあります。地震波で地下をのぞく研究が積み重なり、プルームとみられる構造が少しずつ確認されつつありますが、論争はまだ続いています。
ホットスポットは、プレートが動いているという事実を島と海山の年代で直接示してくれる、地球の記録装置です。列をなす火山島の一つひとつには、数千万年にわたるプレートの旅が刻まれています。
目に見える火山の向こう、地下深くの流れまで想像してみること、それが生きて動く地球を学ぶ第一歩です。