今回は心理学の一分野として、忘却という概念と理論についての資料を作成したいと思います。誰もが日常生活の中で、何かを忘れたり、なかなか思い出せなかったりする場面を数多く経験するものですが、こうした身近な現象がどのような原理によって生じるのかを見ていきます。
大きく干渉理論、減衰理論、検索失敗理論、動機づけられた忘却、物理的な記憶障害に分けて紹介し、これからそれぞれの概念を見ていきたいと思います。
干渉理論
干渉理論の概念図
干渉理論では、ある情報Aが必要な場面で、情報Bがそれを妨げることによって忘却が生じます。慣れ親しんだ以前の情報が新しい情報を妨げる場合や、時間がたって新しい情報が以前の情報を妨げる場合があります。
また、異なる情報が混ざり合い、場面Aで場面Bの情報を呼び出してしまう場合もあります。日本語の単語を思い出さなければならないときに、中国語の単語が浮かんでしまうといった例が挙げられます。
減衰理論
減衰理論の概念図
減衰理論は、時間の経過とともに記憶が薄れていくという理論で、長期記憶に移行したとしても、繰り返し使わずに長い時間がたつと、それも徐々に忘れられていくというものです。
言語も長い間使わなければ忘れることがあり、いくら一生ものといわれる技能でも、時間がたつ間にまったく使わなければ、おぼろげになってしまうものです。
筆者自身の例を挙げると、幼い頃から成人するまでの20年間は右利きとして文字を書いていましたが、その後、文字を書く手を左手に変えました。それから15年以上がたつと、今では左手での書き方ばかりに慣れてしまい、いざ右手で書こうとすると、左手での文字の書き方とかなり混同してしまい、つかえながら書くようになりました。書けることは書けるのですが、バッファリングが起きているように感じることがよくあります。
検索失敗理論
検索失敗理論の概念図
検索失敗理論は、確かに知っている情報なのに、頭の中のどこにあるのか思い出せず、うまく取り出せないという概念です。
そのため、必要なときには記憶が浮かばず、時間がたってから思い出して残念に感じる場面や、記念日を思い出せずにいたものの、カレンダーやメモに記した手がかりを見て思い出すといった例が挙げられます。
この理論は、記憶が完全に消えるというよりも、頭の奥深くのどこかに隠れていて、関連する手がかりが入ってきたり、感情の状態が変わったりすることでよみがえる可能性があるという概念だといえます。
動機づけられた忘却
動機づけられた忘却の概念図
動機づけられた忘却は、覚えていたくないことを意図的に忘れるという理論です。気の進まない約束をしたときに、覚えておこうとする動機がないため、時間がたってすっかり忘れてしまう場合や、誰かと対立したときに、自分が覚えていたいことだけを記憶し、後に再び対立した際に自分に有利な記憶だけを持ち出して、対立が深まってしまう場合などが例として挙げられます。
物理的な記憶障害
物理的な問題によって生じる記憶の問題
これは先ほど紹介した一般的な理論とは異なり、何らかの衝撃や加齢などによって記憶が損なわれるケースです。事故などの衝撃によって生じる 記憶喪失、脳の神経細胞の破壊や認知症の初期症状による 物忘れ、高齢者によく見られる 認知症(アルツハイマー病)などが代表的な例です。
以上、心理学で扱われる概念のうち、忘却に関する理論を整理しました。よく経験する忘却という現象を概念を通じて理解し、どうすれば忘れずにしっかり記憶できるのかを考える機会になればと思います。